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百花園茶会

向島百花園の茶会が3年ぶりに開催される事となりました。

百花園茶会とは戦後すぐにまだ東京が焼け野原の状態のさなか、百花園内にある売店の女将の故佐原洋子様が百花園を盛り上げようと音頭を取り、それに呼応した祖母が「百花園茶会」と銘打って園内のお座敷やあづまやにお茶の設えをして来場したお客様にお茶を振舞った事が始まりと聞いております。

その後東京都公園協会が母体となり百花園を運営していくこととなり、8月末には「虫ききの会」、仲秋の名月の前後3日間を「月見の会」、9月~10月にかけて「萩まつりの会」とイベントを催すようになり、祖母と父がそのイベントに合わせ百花園茶会として各流派の先生方のご協力のもとお茶会を開きました。

多い時で来場者数は1日300人を超えるほどだったと聞いております。

昨今は初秋とはいえうだるような暑さが続き、お客様の足が遠のいていることは否めません。またご協力いただいていた各流派の先生方もお亡くなりになったり、御歳を召されてお客様をもてなすお力が無くなったなどを理由にお断りいただく事も増えてきました。

そんな中、祖母、父の後を引き継いだ私ですがいっときのような大勢のお客様をお迎えする事はありませんが、社中の皆と力を合わせまして百花園に来場されましたお客様に喜んでいただけるよう精一杯お茶を振舞っております。

そんな百花園茶会もコロナ禍の影響で2年間開催される事が出来ませんでした。

茶会に限らず百花園自体閉園しなければならない時期もありました。それでも毎年準備だけはしてきました。社中の皆もお客様をもてなす為に日々の稽古に励み、いつ開催の許可が出てもいいように準備を整えておりました。それだけに茶会中止の知らせにはかなり悔しい想いをさせられました。

そして今年、ようやく百花園茶会の開催の許可が出され、3年ぶりに3つのお茶会を実施することができました。

【受講生のコメント➀】

先日向島百花園虫ききの茶会に参加させていただきました。

コロナ禍で中止を余儀なくされ数年ぶりの開催とのことで、沢山のお客様にお運びいただきました。

9月の開催でしたが、まだ少し暑さが残る日でしたので「虫きき」や「夏」にちなんだお道具や設えでお客様をお迎えしました。

放虫式に参加されたお子様は鈴虫をあしらったお香合を楽しそうに拝見されたり、

隅田川花火大会を思わせる花火蒔絵の棗の美しさに感動なさっているお客様もいらっしゃいました。

また主茶碗には先日清水久嗣先生の窯元で作陶したお茶碗を使用させていただきました。

普段は師匠のお道具をお借りして「説明」することで精一杯でしたが、自作のお茶碗だと作陶した時に感じた生の体験を自然と自分の言葉で「会話」することができ、ほんの少しお茶室でのやり取りの楽しさを感じることができ嬉しく思いました。

この日はお点前と席主を務めさせていただきましたが、お席ごとの雰囲気ががらりと変わること、お客様からのご質問も多種多様で大変勉強になりました。

日頃から師匠に、「その場その場で、もてなすお客様に合わせた何万通りものお点前がある」と教わっておりますが、そのお言葉どおり、臨機応変な対応や深い知識が必要とされるのだと痛感いたしました。

茶道は相手があるスポーツなどとは違い、常に自分と向き合い自分自身の課題を発見できることが魅力の一つだと思っております。

趣味であれ仕事であれ、そこに自分の成長を感じることで人生が豊かになっていく。

お茶会では、それに加えて、それぞれの役割の中で動き、各々の課題をみつけ、共有し、高め合える社中のみなさまがいることに改めて感謝と誇らしい気持ちになりました。

お稽古だけでは気づけない貴重な体験をさせていただき師匠に改めて感謝申し上げます。

また一年後のお茶会では、少しでも成長を感じられるよう日々のお稽古に努めたいと思います。

【受講生のコメント②】

新型コロナウイルスの影響で3年ぶりの開催となった向島百花園の月見の会。

社中の私たちはこの日ために1年間お稽古に励んでおりますので、待望のお茶会となりました。

心待ちにしていたのはお客様も同じだったようで、2日間を通じて大盛況に終わりました。

俳句が記された行燈に灯りが灯る頃には煌煌と輝く満月が顔を出し、木々たちが風になびく隙間から凛としたお琴の音色が流れてきます。

百花園には日常から離れた幻想的な風景が広がっていました。

お茶会は百花園にあるお茶室で行われます。

個人的には、まだお稽古を始めて間もないにも関わらず、直前特訓を経てお点前まで披露させていただき

大変貴重な経験となりました。失敗もありましたが、それを糧にこれからも精進してまいりたいと思います。

社中の皆で連携しながらそれぞれの役割を懸命に務めましたので、おもてなしの心が伝わっていれば嬉しく思います。

当日お越しくださったお客様、共に頑張った社中の皆さん、そして澤井先生に感謝申し上げます。

お茶の時間は無になることができます。五感をフル活用してその空間に浸ることで、なにかと忙しない日常を忘れさせてくれます。

お茶碗にお湯を注ぐ音で、パッと自分の感性が開くような感覚を覚えたこともありました。

お作法にはたくさんの決まりごとがあって驚きますが、その意味を考えると昔の人の生活が蘇り、歴史に想いを馳せることにつながります。

着物を着ることも大きな楽しみのひとつです。

ひとつひとつの経験を大切にしながら、これからより一層奥深いお茶の世界を味わっていきたいと思います。