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中秋の名月

今年の中秋の名月は9月21日(火)になります。

月を愛でる風習はかなり昔に中国から渡ってきたと言われています。

昔の娯楽と言えばそういった自然の力を五感で楽しむことしかなかったのでしょう。現在ではテレビやネットなど気軽に楽しむツールがいくらでもありますが、時には外に出て自然の万物を肌で感じる事も大事なのではないでしょうか。

月見といえば、この頃にはよく観月茶会や月見茶会と銘打って大寄せの茶会が開かれます。千穂菴から歩いてすぐの所に都立の公園「向島百花園」があります。

毎年その百花園に於いても「月見の会」が催され、私の家も東京都からの依頼で祖母の代から園内のお座敷やあずまやにお茶の設えをして稽古人の方々にも着物を着てもらい、来園されたお客様に一服のお茶を差し上げております。残念ながら昨年に引き続き今年もコロナの影響で中止になってしまいました。

私は幼少の頃から月見の会の期間中は夕方になると祖母に連れられ百花園に行き、夜九時ころまで園内で過ごしました。幼い頃の私は月を見る事よりもテレビを見ている方が楽しく正直つまらなかった事を思い出します。それでも晴れた日にお月様が顔を現すとそれに気づいた園内のお客様からは歓声が上がり、私もつられてお月様を見てはその大きさや美しさに見惚れていました。

長年月見の会では百花園から必ず月を見るという習慣がある私は今でも毎日とは言いませんがよく月を見ています。

一年を通して見ているお月様もやはり百花園から見る中秋の名月はより一層の美しさがあります。

そんなお月様をお茶の道具で表現する事もまた昔の人たちの娯楽だったのではないでしょうか。また自然の万物をお茶室に取り込み、同じ感覚の人たちをお客に迎え入れ共感し合う喜びも昔の茶人たちは大いに楽しんだ事と思います。

千穂菴では来年の月見の茶会に向けてお客様に美味しいお茶をご提供できるようにお月様にまつわるお道具にて稽古人の皆さんと一丸となって稽古に励んでおります。

来年こそはまた賑やかな百花園の中で大勢の皆様と共に美しいお月様を拝むことが出来ます事を期待しております。